フランスハーブ農家に流れ着く前のおはなしを、、

フランスハーブ農家に流れ着く前のおはなしを、、

「もう無理だ。」

その思いが確信になってからの私の行動は、とにかく早かった。
会社の規則上で最短に辞められる日を退職日として提案し合意を得て、働くより時間が欲しかったので家賃は払えないと考えマンションを解約した。
それからの毎日は、
お客様:「ご自分でお店出されるんでしょ?こっそり連絡先教えて。はるかさんに髪切ってもらいたいから。」
私  :「お店?出しませんよ。」
お客様:「じゃあ何するの?今のキャリアがあるからそれを活かすんでしょ?メイクのお仕事?海外に行かれるの?」
私  :「何もしませんよ。ふわっと生きるんです。」
お客様:「笑、冗談でしょ!!大丈夫、内緒にするから連絡先教えて。」
私  :「長い付き合いだから〇〇さん私のこと分かりますよね?嘘つかないし、決めたことはやります。」
お客様:「本当に美容の世界辞められるの?!!」
私  :「そうですよ。」
お客様:「もったいないじゃない!頑張ってきたのに、栄転だと信じていたからショックだわ…」
私  :「どうしてもったいないんですか?頑張ったからもう満足なんです。今までありがとうございました。」
そして、泣いてしまう方も多くて後味の悪い会話が続いた。
私の行動が一般的じゃないから信じてもらうのに時間がかかった。その時の私は今まで美容師としてプロとしてそうしてきた様な振る舞いはできていなかった。周りの方からのご質問も心配してくれるがゆえだったろうに、上手には振る舞えなかった、大人な対応が取れなかった、【私】で返してしまった。
体も心も疲れ切って自分一人を受け止めるのにもいっぱいいっぱいだった。私が【私】を無くしてしまわぬよう必死だった。

『一人でいること、誰にも踏み込まれないこと、じっと動かず考えたい。この気持ちを理解したい。漂うように生きる、私の頭にずっとあるこのワードを大切にしたい。』

仕事も住まいも捨ててでも優先させたいこの願いの強さが、私を【岩】にした。
それまでの人生の流れを止めてしまうほどの大きな岩に。

 

つづく

 

(これは2021年に綴ったものです)

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