フランスハーブ農家に流れ着く前のおはなしを、、、

フランスハーブ農家に流れ着く前のおはなしを、、、

たくさんのハーブに囲まれて、手には籠を持ち、ハーブを摘みながら頭に浮かんだこと。

 

「なんで私はここにいるんだろう。」

 

私は18歳から17年半美容師として朝から晩まで働いてきた。
ヘアスタイルを軸にお客様と共にその方をプロデュースしていく楽しみがそこにはあった。ヘアショーの仕事で海外へ行ったりもした。
毎日、自分の技術などを磨き高めるのに必死だったし、その時一緒に苦楽を共にした仲間もできた。
周りからはきっとキラキラして見えていたんだろうな。

髪の毛や素肌に触れるからだろうか、お客様と私の会話には深いものがあり家族や友達でもない不思議な関係を作っていった。私は昔から何気なく話すことが本当だったり、本当になったりする。そこも話し相手としては魅力の一つだったのかもしれない。特殊な職業だったなと離れてみて思う。

ただ髪の毛を切るだけでは許されないプレッシャーがそうさせたのか、何かを吸い取られていくような、そして、年々私は【私】をすり減らしていくのだった。
楽しい時間を過ごしているのに、自分が満たされるのではなく消耗していくのだ。
そして、一日のほとんどを過ごすこの空間、ここにいる私は【私】ではないという思いを強く感じるようになってしまっていた。苦しくて息がしたくてたまらなかったのを今でも忘れることができない。
様々なしがらみで離れることを許されなかった数年間はとても辛かった。そして、私の周りの人にも辛い思いをさせてしまった。
そんな状態だから必然的に訪れた。

                                             

 

「もう無理。」

 

そして私は美容師を辞めた。
働くこともやめた。
今までの暮らし方はいやだと捨てた。

                         

 

 

自分の体をいっぱい使って大きな岩となり、私は人生の流れを止めたのだ。

 

つづく

 

(これは2021年に綴ったものです)

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